波乱を勝ち抜いた49代表。史上屈指の混戦を制するのはどこだ
8月5日、第108回全国高等学校野球選手権大会が阪神甲子園球場で幕を開ける。
今年の夏は例年以上に「波乱」という言葉がふさわしい大会となった。地方大会では全国屈指の強豪校が次々と敗れ、春の実績や過去の甲子園経験だけでは勝ち上がれない高校野球の一発勝負の難しさが改めて証明された。毎年「本命」と呼ばれるチームは存在する。しかし今年は「波乱」が全国的に起きておりどの代表校にも全国制覇への可能性がある。
出場する49代表校は、それぞれの県で幾多のプレッシャーを乗り越え、最後の一枚の切符を手にしたチームだ。その積み重ねが甲子園でどのような戦いにつながるのか。大会開幕を前に注目ポイントを整理していきたい。
春の実績だけでは勝てなかった地方大会
今年の地方大会を振り返ると、まず目につくのは波乱の多さである。
春季大会やセンバツで結果を残したチームが、夏には姿を消した。昨秋から高い評価を受けていたチームや、ドラフト候補を擁する強豪校であっても、地方大会を勝ち抜くことはできなかった。
高校野球では「春と夏は全く違う」という言葉を耳にする。春に課題が見つかれば夏までに修正する時間はある。しかし、夏は一度負ければ終わりだ。どれだけ高い能力を持つ選手がいても、一球のミス、一つの判断、一つの失策で勝敗は決まる。
地方大会では、そうした高校野球の厳しさが全国各地で繰り返された。
特に神奈川、大阪、愛知、福岡、埼玉といった激戦区では、甲子園常連校同士が早い段階から激突する組み合わせも多く、実力校が次々と姿を消した。
地方大会を勝ち抜くこと自体が、全国制覇に匹敵するほど難しい地域も少なくない。
単純な野球の技術だけではなく、連戦への対応力、投手起用、猛暑の中でも戦い抜く体力とコンディション管理、試合終盤の集中力、そしてプレッシャーに打ち勝つ精神力。など
そのすべてがそろって初めて、夏の頂点へたどり着くことができる。
今年の地方大会でも、延長タイブレークや一点差の接戦が数多く見られた。大量得点で勝ち進んだチームだけではなく、1点を守り切った試合や終盤の逆転勝ちを積み重ねたチームも少なくない。
春の評価や過去の実績は、参考の一つに過ぎず、地方大会で磨き上げた総合力と勝負強さを、甲子園という大舞台でも発揮できるチームこそが、深紅の優勝旗に最も近い存在となるだろう。
優勝候補4校
横浜(神奈川)
優勝候補の筆頭に挙げられるのが横浜である。
全国屈指の投手陣を中心に、攻守ともに高いレベルでまとまっている。試合の主導権を握る力があり、大量得点だけでなく接戦にも強い。
一方で、組み合わせは決して楽ではない。初戦の相手は昨年夏優勝校の沖縄尚学。初戦から総力戦が求められる。それでも優勝候補に挙げられる理由は、春選抜からの成長や選手層の厚さ、関東大会優勝、この夏の試合の圧倒的なチーム力にある。
智弁和歌山(和歌山)
毎年のように全国上位へ進出する名門は、今年も完成度の高さが際立つ。
投手力だけではなく、打線のつながり、小技、守備、走塁と高校野球に必要な要素を高いレベルで兼ね備えている。
大量得点で勝つだけでなく、一点差をものにする試合運びも巧みであり、大会終盤まで勝ち残るだけの経験値を持つ。
神村学園(鹿児島)
近年、全国大会で安定した成績を残している神村学園も優勝候補の一角である。
堅実な守備と高い機動力は全国屈指。相手に隙を与えず、一つひとつのプレーを積み重ねて勝利を引き寄せる。
春の選抜は横浜高校相手に2−0で勝利した。トーナメントを勝ち抜く上では非常に怖い存在だ。
沖縄尚学(沖縄)
昨夏王者として迎える今大会。
昨夏の甲子園優勝を経験した末吉選手、新垣選手のWエースが残り甲子園で勝つために必要な戦い方を知っていることは最大の強みである。
全国大会独特の雰囲気や連戦への対応など、経験がものを言う場面は少なくない。初戦の相手は横浜高校だが、初戦に勝てば勢いに乗れる。今年も優勝争いの中心となる存在だ。
ダークホース注目の2校
聖隷クリストファー(静岡)
好投手:高部選手を中心に全国でも旋風を巻き起こす可能性を秘める
今大会のダークホースとして最初に名前を挙げたいのが、静岡代表・聖隷クリストファーである。
静岡大会では、常葉大菊川や静岡など実力校がひしめく激戦を勝ち抜き、2年連続の甲子園出場を果たした。爆発的な得点力があるチームではないが、投打のバランスが非常に良く、失点が少なく大きく崩れないことが最大の強みだ。
経験豊富な注目左腕の高部選手を中心に粘り強さを発揮できれば、今大会最大級の番狂わせを演じても不思議ではない。
遊学館(石川)
伝統校復活へ。激戦区を勝ち抜いた試合巧者
ダークホースとして注目したいのが石川代表・遊学館だ。星稜や小松大谷、日本航空石川、金沢など全国屈指の強豪がひしめく激戦区・石川を勝ち抜き、甲子園への切符をつかんだ。
大勝で勝ち上がるのではなく、接戦をものにしながら勝利を積み重ねてきたことは大きな強みである。複数の投手を軸に守備から試合のリズムをつくり、限られた好機を確実に得点へ結び付ける試合運びは、高校野球らしい堅実さが光る。
初戦では青森山田との難敵対決が待つが、この一戦を突破すれば一気に勢いに乗る可能性は十分ある。甲子園で数々の熱戦を演じてきた伝統校が、再び全国にその存在感を示すか注目だ。
注目投手
今年の甲子園を彩る4人のエース
今大会も全国各地から実力派投手が集結した。150km/hを超えるストレートで打者を圧倒する本格派から、抜群の制球力と投球術で打ち取る技巧派まで、そのタイプはさまざまだ。中でも今大会を代表する4人の投手に注目したい。
織田翔希(横浜・3年)
今大会屈指のドラフト候補であり、優勝候補・横浜をけん引するエース。最速157km/hを誇るストレートに加え、多彩な変化球を自在に操る完成度の高い右腕だ。神奈川大会でも圧巻の投球を見せ、全国屈指の投手として評価を高めてきた。横浜が頂点を狙う上で、その右腕が握る役割は極めて大きい。
末吉良丞(沖縄尚学・3年)
昨夏の全国制覇を経験し、今年も沖縄尚学の絶対的な柱としてマウンドに立つ。力強い直球だけでなく、試合を組み立てる能力の高さが最大の武器。ピンチでも動じることなく打者と勝負できる精神力は、全国トップクラスと言える。初戦から横浜との大一番が予定されており、今大会屈指の投手戦が期待される。
黒川凌大(花咲徳栄・3年)
埼玉大会を制した花咲徳栄のエース。MAX147km/hのノビのある直球と変化球を巧みに織り交ぜ、打者に的を絞らせない投球が持ち味だ。試合ごとに修正能力を発揮し、勝負どころで粘り切る姿は地方大会でも際立っていた。全国の強打者を相手に、どこまで持ち味を発揮できるか注目したい。
高部陸(聖隷クリストファー・3年)
最大の武器は、左腕から繰り出されるMAX150km/hのストレート。常時140キロ台後半を計測する球威に加え、5種類の変化球を操り欲しい場面で三振が取れるようになった。ピンチの場面でも野球を楽しめる精神力も魅力。
【まとめ】全国大会を勝ち進むために必要なもの
今年の甲子園も混戦となりそうだ。
地方大会とは異なる環境で連戦となる甲子園では体力的にも精神的にも選手たちには負担がかかるはずだ。
序盤から優勝候補同士が激突するブロックもあれば、勢いに乗ったチームが一気にベスト8、ベスト4まで駆け上がるブロックもある。ダークホースや初出場校にも十分に上位進出の可能性がある。
同じ実力を持つチーム同士でも、組み合わせによって勝ち上がる道のりは大きく変わる。
後編では、実際の組み合わせをもとに各ブロックの戦力を徹底分析。
優勝候補が待ち受ける試練、ダークホースが旋風を起こす可能性、勝ち上がりのポイントまで掘り下げながら、ベスト8、ベスト4、決勝カード、そして深紅の優勝旗を手にするチームを大胆に予想していきたい。甲子園開幕前、最後の展望としてぜひ後編もご覧いただきたい。

