「開通目前」長いトンネルの先に見える、叡明再起の夏【埼玉】【独占】

2026年6月14日。

夏の埼玉大会開幕まで約1か月。昨夏、埼玉県優勝と甲子園初出場という歴史的快挙を成し遂げた叡明高校野球部を再び訪れた。

昨年のチームは春季大会準優勝、夏の埼玉大会優勝、そして甲子園出場。

叡明高校野球部は数ヶ月で殻を破り埼玉高校野球界の注目校へと駆け上がった。

しかし、歴史的快挙と同時に新チームへ大きな期待とプレッシャーをもたらしている。

新チームでは秋季大会は県大会3回戦熊谷商業に敗戦し春季大会は県大会初戦で武蔵越生に敗戦した。

「甲子園出場校」という肩書きを背負いながらも、思うような結果を残せていない。

ノーシードで迎える夏の大会を目前に控えた6月中旬、中村要監督に現在のチームについて話を聞いた。

目次

「チームが出来上がっていない」春季大会は通過点

昨秋、叡明は熊谷商業に1-4で敗れた。

冬を越え、春季大会地区代表決定戦では白岡高校に8-3で勝利し県大会出場を決めたものの、県大会初戦で武蔵越生に3-5で敗戦した。

しかし中村監督は、その敗戦を冷静に受け止めている。

「結論としては、まだチームが出来上がっていない状態だった。春の敗戦は必然だった」と語り、その理由として挙げたのが、メンバーの未確立だった。

怪我人や経験不足。

毎試合のようにオーダーが変わり、その日の状態を見ながら戦う状況が続いている状態だという。

「昨年のチームは春の段階である程度メンバーが固まっていた。今年はまだそこまで至っていない」

一方で、中村監督はそれを悲観していない。

「逆に言えば、まだ誰にでもレギュラーを掴むチャンスがあるということ」

固定された主力が存在しないからこそ、競争が生まれる。その競争の中から夏の主役を探している段階だ。

「成功体験がチームを変える」中村監督が信じる高校生の可能性

今の叡明を語る上で避けて通れないのが昨年のチームの存在だ。

春季埼玉大会準優勝し関東大会出場。全国屈指の強豪校相手に臆することなく戦い自分たちも全国レベルでも十分戦えるという自信を持つことができた。

その結果、夏の埼玉大会を見事勝ち抜き甲子園初出場を決めた。

高校野球においても、これほどの成長曲線を描くチームは決して多くない。

中村監督は当時を振り返りながら監督自身も改めて高校野球の可能性を学ばされたという。

「昨年は出来すぎだったと思います」

春の関西遠征で選手たちが刺激を受け、春季大会での快進撃に繋がったこと。

関東大会で山梨学院と互角に渡り合った経験。その一つひとつが選手たちに成功体験を与えた。

「自分たちもやれる」

その自信がチームを大きく変え、そして前向きな思考が夏の快進撃につながった。

「高校生は本当に短期間で成長する」

だからこそ、今年のチームは結果が出ていないが悲観していないし、昨年のチームを基準にしてはいけないことを理解している。

だからこそ重要なのは、あと1ヶ月やれることをしっかりとやり切って今の選手たちがどこで成功体験を掴むかが鍵となる。

次の夏だけではなく、その先も見据える

昨年夏、念願の甲子園へたどり着いた。甲子園では津田学園との激戦を演じ、全国の高校野球ファンの心に叡明野球部の存在が強く刻まれた。

その結果、今年のチームは埼玉県内でも始動が遅いチームとなった。

秋、春と中々結果が出ない中、振り返った際に見えてきた課題もあるという。

「結果として新チームでの最初の基礎が疎かになっていた部分もあったかもしれない」

夏の勝利を追い求めながらも、同時に秋へ向かう次のチームも育てなければならない。

継続して強いチームを作っていくには来年へつながる土台作りも指揮官にとって重要な仕事である。

この日、Aチームはグラウンドで練習を行っていたが、Bチームは近隣校との練習試合を行っていた。監督自らBチームの指揮を取り、ベンチ入りを争う選手たちを細かくチェックする。ベストな20人に選ばれるための競争が最後まで続いていた。

「託された想い」支えてくれる人たちのエールを心に秘めて

夏の開幕を目前に控えた取材当日は、練習後に父母会主催の壮行会が行われた。

父母たちから選手たちへ千羽鶴やお守りを贈呈。一つひとつに込められた願いは悔いのない夏を戦い抜いてほしいという思いだった。

さらに中村監督からは記念Tシャツが手渡された。そのTシャツにはチームの歴史と新たな夏への期待が込められている。

壮行会の中で父母会が制作した特別映像が上映された。

これまでの歩みや仲間との日々。先輩たちが越えられなかった甲子園での1勝を掴み取るために。
スクリーンに映し出される一つひとつの場面を選手たちは真剣な表情で見つめていた。

家族の支えや仲間の存在、指導者の思い。

夏まで残された時間はわずか。

映像が終わった後の選手たちは、「よし、やってやるぞ」とこれまで以上に引き締まった表情に変わったように見えた。

「勝敗より大切なもの」を掴むために

中村監督が選手たちへ伝え続けている言葉がある。

「負けることは怖くない」

その言葉の真意は勝敗を軽視しているわけではない。

高校野球は人生の通過点だからだ。

「勝ち負けだけではなく、この高校野球の中で人生に必要なものを見つけてほしい」

中村監督の指導方針は創部以来変わらない。

社会で通用する人材育成。長い人生の中では甲子園出場も甲子園に向かって毎日努力した日々が一つの成功体験になれば選手たちは自信を持って社会で活躍できるはずだ。

夏の大会まで残された時間はわずか。

6月17日に埼玉大会の組み合わせ抽選会が行われる。

昨夏の栄光を知る選手たちも数名残っているチームだが、まだ完成していないからこそ伸びしろがある。

中村監督が信じる高校生の成長力が、再び叡明旋風を巻き起こすのか。

答えは夏のグラウンドで示される。

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