叡明高校のユニフォームを身にまとい、1年夏からマウンドに立ち続けてきた右腕・田口遼平。彼は攻守にわたり常に中心としてチームを支えてきた。2025年春、叡明高校野球部は春季埼玉大会で準優勝。勢いそのままに挑んだ関東大会では、強豪・山梨学院を相手に堂々とした戦いぶりを見せた。そんな叡明の“顔”とも言える田口選手が、野球にかける思いと高校最後の夏への覚悟を語った。

「自分が強くしたい」と思えたチームとの出会い
出身は越谷市立千間台中学校。小学生時代は千間台FBクラブ、中学では埼玉SPヤングに所属し、東関東選抜にも選ばれるなど、幼い頃から高いレベルで野球を続けてきた。中学時代の指導者と叡明・中村要監督との縁から、同校への進学を勧められたという。
「自分の力で叡明チームを強くしたいと思った。」
そんな志を胸に入学した田口選手は、1年生から実力を買われ、マウンドやショートで出場機会を得る。1年夏の大会ではCシード上尾高校相手に3回〜9回まで投げ抜き勝利した。もともと「自分で考え、自分で動く」ことが求められる叡明のスタイルにも、早い段階で順応していった。

守って、打って、投げて——“全てにおいて軸”の役割
現在のポジションは、3番・ショート、またはエース格の一人として投手を兼任する二刀流。試合前には、ショートとして出場する場合は全体練習に参加し、投手として登板する際には一人でのアップ、ストレッチやメディシンボールを使った調整でコンディションを整える。調整のルーティンは自分で考えながらやっている。一人の時間に集中して、その日の感覚をつかんでいる。
打撃面では3番を任され、状況判断に優れたバッティングが持ち味。勝負強さに加え、四死球も選べる選球眼を備えた頼れる存在だ。投手としては、テンポの良い投球を意識し、試合を落ち着かせる役割を担う。守備から流れを作るのが叡明野球の基本。だからこそ、テンポとリズムにこだわる。

春の失投、夏への原動力に
春の埼玉大会では、決勝まで勝ち進み準優勝という結果を残した。田口選手自身も要所でマウンドに立ち、勝負どころではバットでも結果を残してきた。ただ、満足はしていない。
春の大会では、「勝負所での1球が悔やまれる。投げ切れなかった。」
打撃においても「率は残せたけれど、長打が足りなかった」と語るように、まだ成長できる余地を冷静に見つめている。春の関東大会で山梨学院と互角以上に戦えたことは、自信につながると同時に、全国との差を測る貴重な機会にもなった。
「結果としては負けたけど、全国の強豪と互角に戦えるということがわかった。夏に向けて、自分たちの野球をもっと突き詰めていきたい」
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叡明での3年間、田口選手は体づくりにも余念がなかった。食トレを通じて入学時から10kg以上体重が増加し、下半身の安定感が増した。投打において、下半身をしっかり使えるようになったのは、大きな成果だと語る。
また、自主練習にも妥協はない。休日には家で懸垂やダンベル、メディシンボールを用いた筋力トレーニングを欠かさず、2年冬にはピッチングフォームを変更。「右足にしっかり体重を乗せること」を意識し、体重移動の滑らかさを追求した。いま、マウンド上での安定感と打撃での対応力は、その積み重ねの証である。

「浦和学院を倒して甲子園へ」
夏の大会では、埼玉Aシードとして出場する叡明。田口選手にとって、ここが一つの集大成となる舞台だ。対戦したい相手には、強豪・浦和学院の名を挙げた。
「浦学に勝って甲子園に行きたい。自信を持って、抑えて、打って勝ちたい」
その言葉に迷いはなかった。夏の大会では「対戦したことのない学校とやりたいです。見たことのないユニフォームの学校と戦うのが新鮮なので」と各学校との対戦を楽しみにしながら、最終的な目標は甲子園出場を目指している。
恩返しは、結果で示す
試合中に常に心がけているのは「切り替え」。何が起きても引きずらない、前を向いて自分のプレーをする。そのためにも、自分自身に自信を持ち、迷わずプレーすることを意識している。
大切にしているグローブは、昨年仲の良い兄から贈られたもの。「道具へのこだわりは特にないが、兄から買ってもらったグローブは大切にしている」と静かに語った。これまで支えてくれた中学時代の恩師、技術や考え方を教えてくれた先輩方、そして家族への恩返しは、この夏、結果で示したいという。
「甲子園に行って、みんなに恩返しがしたい。いろんな人に支えてもらってここまで来た。その感謝を最後に形にできたらいいと思う」
叡明の“中心選手”として
投手として、野手として、打者として。田口選手は常に叡明の“中心選手”として戦ってきた。仲間とともに歩んできた3年間のすべてをこの夏にぶつける覚悟は、誰よりも強い。自ら選んだ「叡明」という舞台で、全体を見渡せる広い視野を持ちながらチームを勝たせる。そんな田口選手の一球一打に、この夏、埼玉の高校野球界が注目している。
【取材後記】“自分の力で強くする”と決めた日から、背中で引っ張る選手に
取材を通して強く感じたのは、田口遼平という選手には、彼の発言の一つひとつに“重み”があり言葉の中に「責任」を感じた。
チームの中心として投げ、守り、打ち、そして時には広い視野でチームをまとめる。
野球への姿勢も極めて理知的で、調整法やフォームの改良、自主トレ内容に至るまで、自分の課題にしっかり向き合い、言語化している姿が印象的だった。勝負どころでの1球を悔やみ、率は残せても長打を課題と捉える謙虚さは、トップ選手としてさらに上のステージでの活躍を期待せずにはいられない。
彼の目はすでに、甲子園という舞台をしっかりと見据えている。「浦和学院を倒して甲子園に行く」。そう言い切る姿には、結果で恩返しをしたいという強い覚悟があった。
叡明高校が真の強豪となるために欠かせない選手であり、その真ん中に立ち続けてきた田口遼平。彼にとって叡明高校野球部は”導かれた場所”ではなく、”自分の意思で強くしたいと選択し、実行してきた場所”である。
甲子園まであと一歩。彼の高校野球集大成となるこの夏が今から楽しみでならない。
