2026年埼玉春季大会で強豪:浦和学院の背番号1を背負う日髙選手。
宮崎市立大淀中学校出身の181センチ、83キロ。最速147キロの真っすぐを武器に、スライダー、カーブ、カットボール、フォークを投げ分ける本格派右腕だ。
小学校4年から宮崎スターズで野球を始め、宮崎ボーイズを経て、鶴岡一人記念大会九州選抜にも選ばれた。地元・宮崎で野球を続ける選択肢もあったが多くの高校から声が掛かる中で、日髙選手が選んだのは故郷から遠く離れた浦和学院だった。
入学当初は179センチ、67キロ。細さが残る身体だった。浦和学院の練習で最初に感じたのは「きつい」という率直な感覚だったという。だが、その厳しさはただ追い込むためのものではなくオンとオフがはっきりしている。やるべき時間に全員が集中し、必要なことに全力で向き合う。日髙選手はその環境の中で少しずつ自分の身体と心を変えていった。
朝700グラムから始まった、投手としての土台づくり
日髙選手の進化を語る上で欠かせないのが、食事とトレーニングだ。
朝700グラムの食事。簡単に聞こえるかもしれないが、毎日積み重ねるとなれば決して軽いものではない。食べることも練習の一部として身体づくりに向き合ってきた結果、入学時から16キロの増量に成功した。
ただ体重が増えただけではなくウエイトでつくった身体をどうボールへ伝えるかを意識してトレーニングに励む。
投手にとって大切なのは、筋力そのものではなく、力をいかに効率よく指先まで届けるかが重要である。下半身から生まれたエネルギーを体幹で受け止め、腕へ、そしてボールへとつなげていく。その感覚を磨く日々が現在の最速147キロという数字につながっている。
またこの一冬で日髙選手だけでなく投手陣全体も球速を伸ばした。
才能ある選手が集まっていることだけではなく食事、トレーニング、練習への向き合い方。そのすべてを高いレベルで徹底できることが浦和学院の強さと言える。

顔に出ていた投手が、声で切り替える投手へ
日髙選手が高校野球を通して自身が最も成長したと感じているのはメンタル面だという。
中学時代までは、味方のエラー、自身の制球の乱れ、試合の流れが傾きそうになる瞬間などうまくいかない感情が顔に出てしまうことがあった。
だが浦和学院での時間が、日髙選手を変えた。
ミスをした時、彼は周りへ声を掛け、一呼吸ついてから次の打者に集中する。ベンチに戻れば声を出し、気持ちを切り替える。かつては顔に出てしまっていた感情を、今はチームを前へ向かせる声に変えようとしている。
投手としての成長とは球速が上がったり制球が良くなったりするだけではない。打たれた後、味方のミスの後にどんな表情でマウンドにいるか。
日髙選手はその一つひとつが、チームの空気を左右することを理解しているからこそ、ミスの後に沈まない。自分の中に感情を閉じ込めるのではなく、声を出すことで流れを断ち切る。投手として、そして浦和学院の一員として皆で同じゴールを目指すためチームとして戦っている。

147キロの先にある課題――抜け球と向き合う日々
日髙選手の長所は、何といっても最速147km/hのストレートの強さだ。その他スライダー、カーブ、カットボール、フォークを投げ分け、打者に的を絞らせない絶対的なピッチングができるが本人の中には明確な課題として「抜け球」を挙げている。
力のある投手ほど、わずかな感覚のズレが大きな乱れにつながることがある。指にかからないボールは、意図したコースから外れ、試合の流れを変えてしまう可能性もある。日髙選手はその課題から目をそらさない。
彼が意識しているのは、左打者のインコースにカットボールを投げる感覚だ。しっかりと指にかけ、ボールを操る。その感覚を身体に染み込ませるために、日々の練習に取り組んでいる。
速い球を投げられる投手は全国にいるが、勝てる投手になるためには強い球を狙った場所へ投げ切る力が必要になる。
身体は大きくなり球速も上がった。ボールの出力を制御できるようになれば浦和学院の甲子園出場の確率も高まる。
彼がこの夏浦和学院を甲子園に導けるか。世代屈指の本格右腕に注目が集まる。
【取材後記】悔しさを越え、夏の頂点へ
昨年夏は、重要な試合を前に敗れ、秋季大会では決勝で花咲徳栄に敗戦。甲子園に届きそうで届かなかった悔しさはチーム全員が意識している。
日髙選手は「春は必ずAシードを取り夏は優勝を目指す」と語ってくれた。
浦和学院で投げるということは常に結果を求められ勝って当然と見られるプレッシャーがあり、負ければ悔しさは何倍にもなる。
入学時から16キロ増えた身体とMAX147キロまで進化したストレート。ミスを顔に出していた自分から声で流れを変えようとする自分へ。浦和学院での日々が日髙選手を成長させた。
夏を勝ち進むためには、投手の力が大きな割合を占める。
故郷・宮崎を離れ、浦和学院で自分を磨いてきた右腕は、夏のマウンドで何を見せるのか。
敗戦の悔しさを越えた先に、甲子園がある。
日髙選手のストレートは、甲子園を目指すためまだまだ強くなっていく。

