【特集】開智未来高が挑む「未来野球フェスタ」AI×野球で描く次の100年〈前編〉

野球人口の減少は、もはや一過性の課題ではない。
2005年に全国で4253校あった高校野球の参加校数は、2025年には3768校まで減少。部員数も2014年の17万人超をピークに、現在は約12万5千人と、およそ10年で4分の1減となっている。体罰の減少、経済環境の改善、指導環境の整備など、「続けやすい環境」は確実に整っている。それでも競技人口は減り続けている。

「環境が良くなったのに、なぜ人は減るのか」。

この矛盾に真正面から向き合っているのが、埼玉県にある開智未来高校野球部だ。

目次

2019年、80人から始まった「社会への問い」

開智未来野球部が「未来野球フェスタ」を初めて開催したのは2019年1月13日。

第1回の参加者は80人。当時10人程度だった開智未来球児たちが地域の子どもたちに野球の楽しさを伝える試みだった。以降、コロナ禍を挟みながらもイベントを継続し年々参加者が増加し、2026年1月で8回目を迎えた。

未来野球フェスタは単なる野球教室ではない。根底にあるのは「高校生にできる野球界への貢献」だ。

伊東監督は、

「野球人口を増やすには、まず野球の入口である少年野球の人口を増やすこと。」と話す。

プロ野球選手を呼べば集客はできる。しかし、そこに“持続性”はあるかは疑問が残る。今の子どもたちは、野球教室に慣れている。例えばプロ野球選手が来る、有名人が来る、というイベントはたくさんある。でも、同世代に近い高校生が、自分たちで考えて運営する。そのほうが身近に考えられるという。

野球だけではない「もう一つのチーム」

開智未来野球部には、独自の制度がある。

打撃、守備、走塁、バッテリー、生活、企画渉外、全体統括。部員は野球のみではなく、「組織を動かす役割」を必ず担う。

未来野球フェスタは、企画立案から運営、当日の進行、安全管理まですべてを高校生が担う。

今回のテーマは「AI×野球」。

学校としてもAI教育に力を入れる中で、「野球とAIをどう融合させるか」が議論された。

中心メンバーの一人、西田選手はこう振り返る。

「正直、自分たちもAIをよく分かっていなかった。だからまず、自分たちが学ぶところから始まりました」

“AIを使う”のではなく、“AIをどう伝えるか”。その視点が、このフェスタを体験イベントから「教育型イベント」へと押し上げ、子供達の中で印象に残る野球教室へと進化させている。

40人をまとめる難しさと、見えない準備

今回の運営には部員とマネージャー合わせて42人が関わった。中心となった竹繁選手は「一番大変だったのは、人をまとめること」と語る。

何をやるか決めるところから始まって、限られた時間で準備して、天候や安全面も考えて…。野球とAIをどう混ぜるかも、正直悩んだという。

また、機材トラブル、Wi-Fiの接続不良、想定外の参加人数、安全面の配慮など、当日を迎えるまで課題は山積みだった。今回の目標は ”来てくれた子どもたちが、全員楽しい気持ちで帰れるか”開智未来の部員全員が同じ気持ちで準備し当日を迎えた。

参加者から、当事者へ

このフェスタで印象的なのは、「参加者が、数年後に運営側に回っている」点だ。

開智未来野球部1年の小池選手もその一人。小学生時代、未来野球フェスタに参加した経験を持つ。

「ロングティーでネットを越えたとき、高校生たちと一緒に盛り上がったことを覚えています。あの瞬間、野球って本当に楽しいと思えました。」

その記憶が、進路選択にも影響したという。今では自分が教える側として、子どもたちに声をかけている。

「自身と同じように未来野球フェスタの経験が、また誰かの記憶に残り野球人口が増えてほしい。将来開智未来に入ってくれたら嬉しいですけど。」と小池選手は話してくれた。

AIは“答え”ではなく、“きっかけを生むツール”

杉山マネージャーは、今回のフェスタをこう位置づける。

「今回の企画は、あくまで“人が考えたもの”。AIがすべて正しいわけじゃない。便利なツールだけど、依存せず自分で考える力を持ってほしい」AIを使った投球フォーム分析は、「自分自身で野球の技術向上のために考えるきっかけ」を重視して設計された。AIでの数値も大事だが、AIの解答を参考にプロセスを踏むことにより結果がついてくる。

「NEXT100年。次の世代へバトンを渡す」

勝利や甲子園という“ゴール”だけでなく、野球という文化そのものを未来へ残す。そのために高校生ができることを、本気で考え、実行し続けている。

そこには、開智未来が掲げる教育理念が反映されていた。

後編では、210人の子どもたちが集まった当日の現場と、その笑顔が高校生たちにもたらした変化を描いていく。

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