埼玉県立川口工業高等学校硬式野球部で3番打者を任される佐竹 陸(さたけ りく)。
決して大所帯ではないチームの中で、彼は声とプレーの両面から川口工業野球部を引っ張っていく存在だ。小学1年生から野球を続け、中学時代は川口リトルシニアで磨いた技術と競争心を胸に、公立校から甲子園という大きな目標へ挑み続けている彼に迫った。
先輩の背中と指導方針に惹かれて
佐竹選手が川口工業を選んだ理由は、川口リトルシニアの先輩が在籍していたというご縁もあり、中学3年生の時に練習を見学した際、選手たちがシートノックを全力で受ける姿に目を奪われたという。「一つひとつのプレーに手を抜かず、声を出しながら必死に取り組む姿を見て、活気のあるチームだと感じました」。雰囲気の良さではなく、野球に向き合う姿勢に佐竹選手は感銘を受けたという。
また、天内監督の指導方針にも強く共感した。技術だけでなく、考えること、伝えることを重視する指導。公立校であっても、本気で甲子園を目指す覚悟がある。その環境に身を置くことが、自分を成長させると確信し、進学を決断した。

人数は関係ない。声と意識で一つになるチーム
川口工業野球部の特徴を佐竹選手は「全員が常に全力で練習していること」と表現する。人数が少ないことを言い訳せず、一人ひとりの声のトーンや声掛けの質にこだわり、チーム全体の結束力を高めている。部員全員が「甲子園を目指す」という共通の目標に向かい、同じ方向を向いていることが、このチームの強みだという。
練習中にミスが出ると選手同士が集まり、プレーについて話し合い、どうすれば良いか改善点を話し合う光景が日常的にある。試合でもイニング間に選手間で気づいたことを共有し、次のプレーに即座に反映させる。その積み重ねが、接戦をものにする力となり、2025年春のベスト16進出へとつながった。
バットで応え、身体で進化する三番打者
佐竹選手自身の最大の武器はバッティングだ。自ら「アジャスト率」を長所に挙げるように、投手や配球への対応力に自信を持つ。その強みをさらに伸ばすため、長打を打てる身体づくりにも本格的に取り組んでいる。外部の食事講座を受講し、栄養面の意識を高めながら、ウエイトルームでは上半身と下半身をそれぞれ週2回鍛える。数字や理論を理解した上で日々身体作りに励んでいる。
一方で、課題から目を背けることはせず、守備では捕球やスローイングに課題を感じているという。全体練習後、課題練習を重ねている。佐竹選手の守備が安定感を増すことは、チーム全体の守備力向上にも直結する。三番打者として打つだけでなく、守りでも信頼される存在になることが、彼の次のステップだ。

ベスト16の先へ。背負う覚悟と甲子園への誓い
平日は16時から20時まで全体練習を行い、その後も自主練に励む。土日は朝から夕方まで野球漬けの日々だ。
年間約100試合を戦い抜くハードな日程の中でも、試合ではチーム全体で盛り上がりながら戦うことを常に意識している。ミスが出た時こそ声を掛け合い、雰囲気を落とさない。その姿勢は、「応援してくれる皆さんの気持ちが伝わってくる。その思いに応えたい」と話してくれた彼の言葉から地域やOB、先生、保護者の思いを背負って戦っているという自覚が見えた。その原点がぶれることはない。
佐竹選手に高校野球で最も印象に残っている出来事を聞くと、2025年春にベスト16へ進出し、夏のDシードを獲得したことだと語る。川口工業野球部が歴史的一歩を踏み出した成功体験は、これまでの取り組みが間違っていなかったことを証明してくれた。
「2026年春は最低でもベスト16。夏は目標である甲子園を目指したい」。しっかりと語ってくれた彼はこの功績に満足する気持ちはなく、さらに上を目指している。
全力で声を出し、全力で受け止め、全力で考える。その積み重ねの先に、川口工業野球部の未来がある。佐竹選手は、その中心でバットを構え続ける。

【取材後記】公立校から甲子園へ、全力プレー
彼への取材を通して佐竹選手が「野球のプレーだけでなく、姿勢でチームを引っ張る存在」であるということを認識できた。自身の打撃や身体づくりへの探究心以外にも、ミスが起きた場面や苦しい状況でこそ声を出し、周囲に目を配る姿勢は古豪復活に向けチームの中で重要な役割を担っている。全員で甲子園出場という目標を目指す彼らにとって2025年春のベスト16は通過点であり、さらに先を見据えている。
近い将来、川口工業ナインが激戦の埼玉大会を勝ち進む姿を楽しみに今後も見守っていきたい。

