埼玉県屈指の人気校であり入試倍率1.6〜1.7倍となることもある市立川越高校。春ベスト4となり野球部の躍進でも注目されている。その一員として、着実に存在感を高めているのが2年生内野手・嶋田元太朗選手、そんな彼に迫る。

市立川越との出会い。現在の課題は「緊張」
吉川市立吉川中出身の嶋田選手は、小学生時代は越谷リトルリーグで腕を磨き、中学でも地元で野球を続けた。高校進学にあたっては市立川越の体験会に参加。監督や指導者の雰囲気、そして選手たちの真摯な姿勢に惹かれ、「ここなら本気で野球に向き合える」と確信して入学を決めた。
入学当初から「早く試合に出たい」という強い気持ちがあった。その思いを胸に練習を積み重ね、ついに試合出場のチャンスをつかむが、そこには思わぬ壁があった。「すごく緊張してしまう」と口にするように、試合の日は朝起きた時から緊張に襲われているという。しかし緊張をしてしまうと言いながらもそつなく結果を残している点については彼の技量の高さが伺える。

尊敬する先輩たちとフラットな関係が成長を後押し
市立川越のチームカラーについて尋ねると、「上下関係があまりない」という言葉が返ってきた。上級生との距離が近く、試合中も気軽に意見交換ができる環境がある。
「先輩たちが自然体で接してくれるから、自分も臆せずに話せる。おかげで、プレーの反省や次にやるべきことをその場で確認できる」。そんな空気が、チーム全体の成長を後押ししている。
また、憧れの先輩として、斎藤選手と玉井選手(共に3年生)の名前を挙げた。「斎藤さんは選手として本当に信頼できる存在。玉井さんはあまり多くは語らないけれど、背中で引っ張るタイプ。そういう先輩たちの姿を見て、自分もそうなりたいと強く思う」
プレーだけでなく、立ち居振る舞いや人間性にまで目を向けているあたりに、嶋田選手の真面目な性格が表れている。
【ふるさと納税】 旅行 ギフト 埼玉県川越市の対象施設で使える楽天トラベルクーポン 寄附額20,000円春季大会ベスト4の手応えと悔しさ
春の県大会で、市立川越はベスト4に進出。嶋田選手自身もセカンドとして出場し、チームの快進撃を支えた。特に印象に残っているプレーとして、準々決勝・叡明戦で成功させたセーフティーバントを挙げた。「あの場面で決められたのは自信になった」と振り返る。
一方で、「試合全体を通して走塁の判断が甘かった。もしそこがもう少し良ければ、勝てたかもしれない試合だった」とチーム全体への課題も冷静に受け止めている。
チームとしての徹底した連携プレー。個人の強みは「走力」
試合中に心がけているのは、「とにかくチームの役に立てるプレー」。守備面では、春の大会で二遊間を組んだ森選手と頻繁に話し合いを重ね、立ち位置や配球、打者の特徴などを共有していた。
「お互いに声をかけ合うことで、守備でのミスを減らせるし、リズムも良くなる。そういう小さな積み重ねが大事」と語る。
一方、自身のプレースタイルについては、「足を使って相手にプレッシャーをかけるのが持ち味」と語る。出塁後のリードやスタートの駆け引きには自信があり、状況判断の鋭さが求められるポジションでもある。
その一方で、走塁の判断と勇気を課題に挙げた。「スタートを切る瞬間の迷いが、チャンスを逃すことにつながってしまう。もっと思い切ってプレーしたい」と、自らの弱さとも向き合っている。

夏への決意と感謝の気持ち
夏の大会に向けて、対戦したい相手として春日部共栄、そして叡明の名を挙げた。「叡明には春に負けているので、絶対に勝ちたい気持ちが強い。同じブロックなので、夏はリベンジのチャンスがある」
市立川越はBシードとして埼玉大会に臨む。「優勝して甲子園出場」という大きな目標を掲げる嶋田にとって、今はそのための準備期間だ。
試合前の特別なルーティンはないが、道具へのこだわりは強い。グラブはZETTのプロステイタス。「ちょっと硬めの感触が好きで、型にもこだわっている」。スパイクはミズノを愛用しており、試合ごとの手入れも欠かさない。
最後に、家族やこれまで関わってきた人たちへの感謝の気持ちをこう語った。
「いつもサポートしてくれる家族、道具を準備してくれる人たちに、本当に感謝しています。自分が全力で野球に打ち込めるのは、まわりの人たちが支えてくれているから。少しでも恩返しできるように頑張りたい」
【取材後記】「これからは、自分が背中を見せる側へ」
2年生ながら、すでに市立川越の中核を担いつつある嶋田元太朗選手。春に見つけた課題と手応えを胸に、夏の埼玉を駆け抜ける覚悟はできている。憧れの先輩たちのように、今度は自らがチームを引っ張る存在として、熱い夏を戦い抜く。

