決勝 叡明VS昌平

日付:2025年7月27日(日)
試合会場:埼玉県営大宮公園野球場
試合時間:10:09〜12:47(2時間38分)
今大会、初の外野席が解放され、両校の関係者、高校野球ファン、野球少年少女たちが集結し、超満員となった埼玉大会決勝。
叡明が中盤6回に試合をひっくり返し、終盤9回にもダメ押し点を加えて5-2で昌平を下した。先発・増渕選手が8回2失点と試合を作り、最終回はショートからマウンドに上がった田口選手が無失点で締めた。攻撃では8番・細沼選手が2回の先制打と6回の勝ち越し2点適時打で計3打点の大暴れ。昌平は4番・櫻井選手の豪快な一発でリードするも、逆転を許した。

投手まとめ
【叡明】
増渕 隼人(先発):8回105球、2失点(被本塁打1)。序盤からテンポ良くゴロを量産。5回に一発を浴びたが大崩れせず、8回まで投げ切って試合を繋いだ。
田口 遼平(抑え):1回24球、無失点。最終回にマウンドへ。走者を背負いながらも直球とスライダーで押し切り、投打で存在感を発揮した。
【昌平】
窪田 竣介(先発):5回1/3、74球、2失点。序盤のピンチを最少失点で凌ぎ、5回まで粘投も6回に同点三塁打を浴び降板。
東川 一真:0回0/3、6球、2失点 与四死球で満塁を招いてしまったところで無念の降板。球の質はスケールの大きさを感じた。
木下 雅斗:3回2/3、60球、1失点。6回の火消しで登板も直後に被安打されるも、以降は立ち直り試合を作った。
主な活躍選手
【叡明】
細沼 慶聡(8番・二塁):中前適時打、決勝の2点中前打など3打点。勝負どころで振り負けないスイングが光った。
笘 大悟(5番・右翼):6回に同点の中越え適時三塁打。6回のビッグイニングを呼び込む起点となった。
田口 遼平(3番・遊撃→投手):右中間二塁打、9回にも中前適時打でダメ押し。最終回はマウンドで埼玉大会を締めた。
根本 和真(1番・中堅→左翼):先頭で左安打&三盗、9回は四球&盗塁で再び好機演出。機動力で相手バッテリーを揺さぶりチャンスを演出した。
【昌平】
櫻井 ユウヤ(4番・三塁):5回に左中間へ豪快なソロ本塁打で一時勝ち越し。中軸の役割を果たした。
佐藤 光輝(8番・一塁):二塁打を含む3安打を放ち全打席出塁し下位打線ながらもチャンスを演出した。
大倉 巧翔(5番・中堅):2回に右越え二塁打を放ち、3回には四球を選び、チャンスメイクした。
試合展開
初回は両校チャンスを作るも無得点となり迎えた2回、叡明は5番・笘選手が死球で出塁すると、6番・髙野選手がしっかりと送りバントを決めランナーを2塁に進めチャンスを作る。ツーアウトから8番・細沼選手が中前へタイムリーを放ち、機動力と下位の一打で先制する。対する昌平は2回、大倉選手の二塁打から送りバントで1死、3塁のチャンスを作る。続く7番・齋藤選手のセカンドゴロの間に本塁を狙うもタッチアウト。叡明の堅守に阻まれ無得点となる。
3回、昌平は1番・嶋田選手のバント安打、3番・諏江の中前打などで一、三塁とすると、5番・大倉選手が四球を選んだ際、バッテリー間でボールが乱れている間に三塁走者が生還し同点(1-1)とする。
以降も互いに先発両投手のペースで回が進む中、5回裏、昌平の4番・櫻井選手が初球から完璧に捉えた打球を左中間スタンドへ運び勝ち越しに成功(1-2)。主砲の一発で試合の流れが昌平に傾いたかに見えた。
しかし6回表、叡明が一気に反撃する。
4番・赤城選手が右前打を放ち、続く5番・笘選手が中越えの適時三塁打で同点とする(2-2)。ここで昌平は窪田選手に変わり、190cm超の東川選手をマウンドに送るが、死球と四球で満塁となった場面で木下選手に交代。その直後、8番・細沼選手が再び中前へ勝ち越しの2点タイムリーを放ち、叡明が主導権を完全に奪った。(4-2)
その後は増渕選手が7、8回をテンポ良くゼロで切り、9回表には1番・根本選手が四球から二盗を決め、3番・田口選手が右前へダメ押しのタイムリーヒット(5-2)。
9回裏は田口選手をマウンドに送り、走者二、三塁のピンチを作りながらも最後は左飛で試合終了。叡明が要所を締めて初優勝を掴んだ。
⚾️試合のポイント⚾️
⚾️ 6回表・叡明の攻撃が勝敗を分けた
同点三塁打→死球・四球で満塁→継投直後の2点タイムリー。一発勝負での継投の難しさを突いた集中打だった。
⚾️ 細沼選手の3打点
先制点と決勝点の双方を叩き出し、打順8番ながら重要な役割を果たした。
⚾️ 田口選手の二刀流起用が的中
序盤から長打や最終回のダメ押し打に加え、9回はマウンドで無失点。新王者・叡明の大黒柱として投打に活躍し役割を全うした。

⚾️ 増渕選手の“被弾しても崩れない”投球
5回に櫻井選手のソロ被弾後も攻めの姿勢を崩さず、8回2失点で試合を作った粘投が6回逆転劇を呼んだ。
⚾️ 昌平は走塁とバントでのミスが響く
2回の本塁走塁死、4回のスリーバント失敗など、要所を抑えられ得点出来なかったことが痛かった。
【叡明】集中打とWエースで“勝ち切る力”を証明
先制後に一度は逆転を許しながらも、6回の集中打で逆転し主導権を奪い返した。中軸に頼らずとも、5番・笘選手、8番・細沼選手ら中下位打線が繋がりチーム力を発揮した。増渕選手は直球と変化球のコンビネーションで両サイドに丁寧に投げ込み、強力昌平打線に対し要所を締めアウトを着実に重ね、最終回は田口選手にスイッチした。甲子園の大舞台でも、要所での集中打、粘りの全員野球で「勝負どころで1点を取り切る、守り切る」ゲーム運びを見せてくれるはずだ。
【昌平】一発で流れを引き寄せながらも、継投と細部でほころび
櫻井選手の一発で試合の主導権を握ったかと思われた。しかし直後の6回に逆転を許し、後半は叡明バッテリーの緩急と内外角配球を攻略し切れず。バントや走塁判断など“1点を積み上げる野球”の精度が、僅かな差となって勝敗に表れた。
【まとめ】「6回の攻防」と「二刀流の締め」——拮抗戦を割った二つの決定打
互いに好投手を立て、膠着したスコアは“6回の攻防”で一気に動いた。叡明は継投の間隙を突く形で3点を奪取し、終盤は田口選手をマウンドに送る“勝ち切る”采配で逃げ切り。昌平は先発・窪田選手が試合を作ったが、失点直後の立て直しができず、打線も終盤であと一本が出なかった。1点ゲームの延長線上にある終盤の判断力と実行度が、夏のトーナメントを勝ち上がる上での分岐点となることを改めて示した一戦だった。
第107回全国高等学校野球選手権 埼玉大会を振り返る
初Vの要因は「総合力」夏の埼玉を制した叡明の野球が示すもの

今大会の埼玉は、例年以上に「投手の球数マネジメント」と「機動力・細かい攻撃」を磨いてきたチームが上位へ進出している印象が強かった。140キロ台を計測する速球派が複数校に存在する一方で、今日の叡明のように“エースが試合を作り、終盤はショートや外野の主力がマウンドを締める”といった柔軟な投手起用が増え、ベンチの采配・判断の重要度が年々上がっている。
打撃面では、長打力偏重ではなく「下位打線からの得点」「代走・代打を含めた総合力」で1点をもぎ取る野球が主流化。今日の細沼選手のように、8番・9番付近から勝負を決める選手が現れるケースが多く、下位打線からの繋がりがゲームの鍵を握る試合が目立った。
守備・走塁においても、1つの走塁死やバントミスが如実に勝敗へ直結する傾向は変わらなく、特に今大会は、送球の乱れやタッチの遅れなど“基本の徹底”で差がつく場面を多く見かけた。
さらに、導入が進むデータ活用や動画分析により、各校の投手配球や打者の狙い球がより明確化。結果として、先発投手が中盤以降に2巡目・3巡目で捕まる場面が散見された。
2巡目以降の“データの裏をかく”勇気と、継投のタイミングが勝敗に直結している。今日の昌平にとっては6回の継投がターニングポイントとなったが、一方でその判断を迫らせた叡明の“粘りと選球眼”は見事だった。
今夏の埼玉大会は、トーナメントが進むにつれ、伝統校・新興勢力が混在し、強豪校が姿を消していく過去にあまりない結果となった。
失点を恐れず“勝負どころ”に最大のリスクを取りにいけるか、あるいはミスを最小限に抑えた“負けない野球”を徹底できるか。どちらも勝ち上がるための道筋だが、最後に必要なのは「ここぞ」の場面で”どれだけ得点できるか/守れるか”という点である。決勝での叡明の6回、細沼選手の一振りはまさにその象徴。
甲子園でも埼玉決勝で示したような“本質を捉える野球”が発揮されれば全国の強豪校相手にも勝ち上がっていけるはずだ。
叡明高校、初優勝おめでとう!
昌平高校、準優勝おめでとう!