【Bシードのエースを背負う覚悟】市立川越・玉井桜太、集大成の夏へ

川越市立城南中学校出身の玉井桜太選手。「地元で身近な学校だったし、先輩も多く進学していて安心感があった」と市立川越高校を選んだ。実際、少年野球の川越スラッガーズ〜城南中学校の先輩たちも多く進学しており、そこには野球に打ち込む環境が整っていた。

目次

身体作りに取り組んだ3年間

入学当初は線の細さが課題だった。「体づくりは自分の課題だと感じていたので、食事の量を増やして筋力をつけてきた」。試合で投げ抜くスタミナ、打者と真っ向から勝負する球威、そのすべてを支えるのが日々の鍛錬だった。残りわずかとなった高校野球生活を前に、「今は夏の大会に向けてワクワクしている。悔いのないように精一杯プレーしたい」と語る。

春季大会ベスト4。見えてきた投手としての強みと課題

玉井選手の持ち味はテンポの良さとコントロールの安定感。登板時は淡々と、相手打線にペースを与えず試合をつくっていく。「相手が嫌がることを積極的にしていきたい。テンポよく抑えることで、味方にも流れを引き寄せられる」。一方、課題としているのは終盤の粘り。「ギアを上げるタイミングで、もっと踏ん張れるようになりたい」と、試合を締める投球力の向上に取り組んでいる。

2025年春の県大会では、市立川越はベスト4入りを果たした。「目標がベスト4だったので、チームとしての力を実感できた」。その背景には、冬場に徹底した基礎トレーニングがある。ウエイトトレーニング、走り込み、投げ込み、打ち込み。積み重ねた日々が、春の結果につながった。

試合中に印象に残ったシーンとして挙げたのは、早大本庄戦での最終回、センター篠選手のダイビングキャッチ。「あのプレーは本当に助けられた」と話すように、守備の集中力と結束力がこのチームの武器でもある。


強みは「切り替えの力」と「選手層の厚さ」

市立川越といえば、学力面でも評価の高い進学校である。部活動との両立は容易ではないが、玉井選手は「テストや検定の時期にはスケジュールを組んで対応している」と語る。日々の練習は放課後16時ごろから始まり、19時で終了。その後は個人練習で各自の課題に取り組み、20時半にはグラウンドを出るルールとなっている。学校での勉強の他、朝は投手陣でのストレッチ、週末は終日練習と、ハードなスケジュールの中でも集中力を維持できるのは、「切り替えの意識」がチームとして根づいているからだ。

また、市立川越の強みは、選手層の厚さだ。「誰が出ても遜色がない」と玉井選手が語るように、選手全体のレベルが高く、互いに課題を指摘し合える環境が整っている。3年生全体が仲が良く、切磋琢磨しながら成長を続けている。


恩返しの夏。験担ぎは「黒酢」リベンジと甲子園への道

試合前のルーティンとして取り入れているのは、「黒酢を飲むこと」。体調が優れない中で飲んで臨んだ試合で好投できたことから、験担ぎとして習慣にしているという。
だが「気合を入れすぎると空回りしてしまうので、チームメートと自然体で話しながら試合に入るようにしている」と、無理に気負わず普段通りを心がける姿勢が印象的だった。

道具については金具ではなく、ポイントスパイクを愛用しているという。疲労が溜まりにくく、自らの身体に合った道具を選んでいる。

2025年、夏の埼玉大会、市立川越はBシードとして挑む。玉井選手が対戦を熱望しているのは、昨年夏と今春で敗れた叡明高校。「リベンジを果たして、甲子園に行きたい」。また、同じ中学校出身の選手が多く在籍する川越東高校との「川越対決」にも闘志を燃やしている。

チームとしての目標はもちろん甲子園出場。

玉井選手自身も、「活躍して恩返しがしたい」「ここまで来られたのは、家族の支えがあってこそ」。玉井選手は感謝の気持ちを何度も繰り返した。とりわけ、両親が土日の試合や遠征を支えてくれたこと、費用面でも負担をかけたことを強く自覚している。また、中学時代から通う接骨院の先生の存在も大きい。「身体の小さな不調にも気づいてくれて、大きな怪我なくここまでこれた」と語る表情には、深い信頼がにじんでいた。

【取材後記】チームの支柱は、静かに火を燃やす

ピッチャーでありながら、チーム全体を冷静に俯瞰し、淡々と自らの役割をまっとうする姿に、玉井桜太選手という選手の真価を感じた。表に出る派手さはないが、「相手が嫌がる野球をする」「いつも通りに臨む」という姿勢に、勝負師としての芯の強さが見える。苦しい練習も支えてくれた家族や地域、スタッフへの感謝を忘れず、「結果で恩返しを」と語るその言葉に、野球へのひたむきな情熱と人間的な成熟がにじんでいた。最後の夏、静かな闘志を燃やすエースに注目したい。

シェアのご協力お願いします♪
  • URLをコピーしました!
目次