【開智未来】「この監督の下で野球をやりたい」主将・銭谷出海が再現する文武一体

埼玉県屈指の進学校、開智未来高校で主将を務めるのは3年生の銭谷出海(ぜにたに・いずみ)選手。ライトを守りながら状況に応じ様々な打順を担う器用な選手であり、同時に文武一体を実践している。小5の夏、金足農業の「金足旋風」に刺激を受けて野球を始めた少年は、現在、開智未来の中心としてチームを引っ張っている。高校野球に懸ける想い、日々の努力、そして将来の夢まで語ってくれた。


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伊東監督の野球観に惹かれ、開智未来高校へ

出身は蓮田市立黒浜中学校。中3の夏、進路に迷っていた銭谷選手は地元の公立高校に進学し、野球を続けようと考えていた。しかし転機となったのが、開智未来高校の個別面談だった。伊東監督の話を直接聞き、その野球観や指導方針、そして成長のプロセスに強く惹かれた。

「野球だけでなく勉強も頑張れる生徒」を志し「この監督の下で野球をやりたい」という思いから開智未来を選んだ。

開智未来は文武一体を掲げる学校であり、野球部の活動にもその姿勢が色濃く表れている。銭谷選手は片道1時間以上かけて通学しており、その時間を単語暗記や世界史の復習に充てている。野球部では朝練は行わず、毎朝7時半から自習スペースで勉強をしている。さらに練習が18時半に終了した後、最終バスの19時40分までの約1時間を自習に費やす日々を送っている。

高校野球と勉強の両立は簡単ではないが、自分なりに時間の使い方を工夫している。勉強も野球も高いレベルを目指している。

主将として、ひとつのチームを創り上げる

チームの雰囲気を尋ねると、銭谷選手は「とにかく仲が良い」と笑顔を見せた。

「入学時から、上下関係がきついとかは全くなかった。先輩たちは練習を自分たちで組み立て、後輩にも優しく接してくれた。中学までは監督やコーチが練習を全部決めていたので驚きだった」

その自主性が、今の開智未来の特色のひとつ。

昨年、新チームになり銭谷選手自身も主将になったことで、後輩たちとの関係性の中で悩むこともあったという。後輩に強く言えない性格、後輩の人数が多いがゆえに、自分の思いをうまく伝えられない時期もあった。

しかし、冬の厳しい練習を一緒に乗り越え、後輩たちにも自然と認められる存在になっていた。

銭谷選手は”主将”として視野を広く持ち、時にはチームをまとめ、時には皆と同じ目線でチームを作っている。

強みは打撃。自身の課題と向き合う姿勢。

銭谷選手の強みは打撃。特にインコースのさばきには自信を持っている。反面、守備面では中学時代に内野を守っていたが、送球が不安定だったことから、自らの意思でライトへとコンバートを志願した。

「外野の方が自分には合っていると思った。送球が安定しないまま内野にいるよりも外野に行って得意な打撃を磨いたほうがチームのためになる」

自身を俯瞰し自分の弱点と向き合い、変化を恐れず新しいポジションに挑んだ。その判断は結果的に功を奏し、今では外野守備でもチームに貢献している。

印象に残っている試合は、昨夏に開智未来が川越南高校に勝ち、夏の大会で歴史的な初勝利を挙げた一戦だ。銭谷自身は一塁コーチャーとして勝利に貢献し、チームの初勝利の瞬間を見届けた。

「あの瞬間、みんなで喜び、開智未来高校野球部として歴史の1ページに立ち会えたんだと実感した。本当に嬉しかった」


志望は国立大学。教員を目指す先に描く、未来のかたち

銭谷選手の将来の目標は、某・国立大学教育学部への進学を目指し、教員になることだという。祖父は教師、父は塾講師という教育一家に育ち、自らもその道を志している。

大学進学後も野球を続けるかどうかは未定だが、開智未来で学んだことは、間違いなく将来の財産になる。

勉強も野球も努力する意味、自分の課題と向き合うこと、人との関わり方を学び、教育者を目指すうえで、すごく大事なことを開智未来高校で経験している。

オフの日には自習スペースで勉強することが多く、自宅でリラックスする際の趣味はアニメ鑑賞だという。

試合前には朝散歩をして、しっかり美味しい朝ごはんを食べるのがルーティン。集中力を高め試合に臨んでいる。

最後に、今まで関わってきた人たちへの想いを尋ねると、しっかりとした口調でこう語った。

「3年生が3人というのを言い訳にせず、ここまで支えてくれた監督やコーチ、仲間や先輩方に、成長した姿を見せたい。昨秋に敗戦した叡明高校にリベンジをしてベスト16に入りたい。そして自分たちがやってきた高校野球を、誇りを持って終えたい。」

人として、野球人として、そして未来の教育者として。銭谷出海選手の「今」は、確かな志とともに日々積み上がっている。

取材後記:本気で取り組む姿勢。自身の手で未来を創る

取材中、勉強と野球に真剣に向き合う姿勢が非常に印象的だった。野球と勉強のハイレベルでの両立は、決して容易ではない。それでも彼は自ら時間を捻出し、工夫し、文武一体の生活を地道に積み重ねていた。また、仲間に寄り添いながらも、自らの課題と真摯に向き合う姿勢、全体ミーティング時に多くの部員の前でも毅然とした姿で全体に指示を出す。未来の教育者としての素質も垣間見えた。

ふとした会話の中でアニメは何が好きか?という話題で「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」と答えた銭谷選手はストイックな日常の中にも子供らしい一面もあり、その絶妙なバランスを持つ彼の人間的な魅力に引き込まれていった。

この開智未来での経験を胸に銭谷選手から銭谷先生へ。自身の手で素敵な未来を創っていってほしい。

TOMMY
ライター
【自己紹介】
小学校4年生からリトルリーグで野球を始め、中学・高校・社会人とプレーを続けてきた。
今後も野球に関わり続けたい気持ちから、2025年4月には高校野球に特化した総合まとめサイトを立ち上げた。ライターとして球場や学校に足を運び、現場の声を取材・発信している。

【ブログで発信する内容】
このブログでは、主に関東圏内の高校野球部に関する情報を中心に発信している。

・試合の戦評や展開の紹介
・選手や監督へのインタビュー記事
・各校の野球部の方針や取り組み
・地域大会や甲子園だけでは見えない高校野球の魅力
・高校野球を通じた人間成長の姿

勝敗や成績だけでなく、高校野球が持つ教育的な価値や、人を育てる力に焦点を当てている。

【実績】
高校、社会人と野球に取り組んできた実体験や営業や経理など様々な職種での社会人経験を通じて、多角的に物事を見る視点を持っている。
現在までも幾つかの学校を訪れ、現場での取材を重ねてきた。
監督や選手への丁寧な取材をもとに、チームの背景や想いを言葉として伝える記事制作を行っている。

【発信する理由】
高校野球は、勝つことだけが目的ではなく、将来社会で活躍できる人間を育てる場だと考えている。
甲子園を目指すチームもあれば、県大会での一勝を目標に掲げるチームもある。その目標の違いこそが、それぞれの学校らしさであり、教育・高校野球としての面白さでもある。
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