2026年3月19日(木)
第98回選抜高等学校野球大会が 阪神甲子園球場 で開幕する。
今大会には21世紀枠2校を含む32校が出場。北海道から九州まで各地区の秋季大会を勝ち抜いた学校が顔をそろえた。前回大会優勝の横浜高等学校(神奈川) をはじめ、全国屈指の強豪校が集結する一方で、21世紀枠には長崎県立長崎西高等学校 と 高知県立高知農業高等学校 が選出され、公立校の挑戦にも注目が集まる大会となった。
秋の地区大会の勢力図を見ると、混戦の大会になる可能性が高い。ここでは地区別戦力、優勝候補、注目選手などを踏まえながら大会の行方を展望していく。
21世紀枠と公立校の存在感
センバツの魅力の一つが21世紀枠である。戦績だけでなく、地域貢献や学校の特色なども評価されるこの制度は、高校野球の多様性を象徴する。
長崎西は偏差値72と県内でもトップレベルの進学校として知られ、文武両道を体現するチームだ。昨秋の長崎大会では準優勝、九州大会でも初戦を突破するなど安定した戦いを見せた。守備力と機動力を軸にした堅実な野球が特徴で、接戦に強い。
一方、高知農は今回が春夏通じて初の甲子園出場となる。
5年前には部員がわずか3人まで減少し、他校との連合チームを経験しながらも、自分たちの手で野球部を存続させるため野球の普及活動など、地域に根ざしたチームが評価された。強豪私立にも屈しない粘り強い守備と小技を絡めた攻撃が持ち味。甲子園でも“公立旋風”を起こす可能性を秘めている。
近年は21世紀枠のチームが初戦を突破するケースも増えており、序盤戦の大きな見どころとなるだろう。
地区別戦力分析―データ×注目選手で読む勢力図―
■ 北海道・東北(4校) 爆発力と戦術力が混在する“地区”
北照/八戸学院光星/花巻東/東北
花巻東は古城選手・赤間選手のツイン砲を擁し、木製バットでも長打を量産できる稀有な存在。打線の爆発力は全国でも上位に入る。
一方で東北は盗塁数で大会トップクラス。機動力を軸に試合を組み立てるスタイルは、接戦で強みを発揮する。
八戸学院光星は投打のバランス型、北照は守備力重視の堅実野球。
■ 関東・東京(6校) 打撃・投手・スター性すべて揃う最強地区
佐野日大/花咲徳栄/山梨学院/専大松戸/帝京/横浜
専大松戸は打率.390、得点89と圧倒的な攻撃力を誇り、吉岡選手を中心に大会屈指の打線を形成する。
横浜は織田選手を軸にした完成度の高さが光る。池田選手の守備・走塁も加わり、総合力ではトップクラス。
山梨学院は“二刀流”菰田選手という今大会最大注目の選手。試合の流れを一人で変えられる存在だ。
帝京・花咲徳栄・佐野日大も上位を狙える実力は十分にある。
■ 北信越(2校) 戦術特化型。ハマれば上位食い込みも十分
帝京長岡/日本文理
帝京長岡は盗塁37と大会No.1の機動力を誇り、足で崩す野球を徹底する。
日本文理は打率.343、得点力も高く、打撃戦に持ち込めば非常に強い。
■ 東海(3校)大崩れしないが、突出した決め手が課題
中京大中京/大垣日大/三重
大垣日大は打率.350と高水準の打撃を誇る。
中京大中京は荻田選手を中心に攻守でバランスが取れている。
三重は失策が少なく、守備力が光る堅実なチーム。
■ 近畿(6校) “勝ち方を知る地区”=優勝最有力
近江/滋賀学園/智辯学園/大阪桐蔭/神戸国際大付/東洋大姫路
大阪桐蔭は防御率0.85という圧倒的投手力。吉岡貫介と川本晴大の左右二枚看板は全国最強クラス。
近江は打率.371と強打が魅力。
智辯学園は杉本選手の爆発力ある投球が鍵。
神戸国際大付は長打力があり、打撃戦では脅威となる。
■ 中国(2校)投手力次第で番狂わせを起こす可能性あり
崇徳/高川学園
高川学園は本格派右腕・木下選手を擁し、試合を作れる強みがある。
崇徳は本格派左腕・徳丸投手を中心に足を絡めた攻撃が強み。
■ 四国(3校〈内、21世紀枠1校〉)ロースコアゲームなら上位進出も可能
英明/阿南光/高知農
“守備と粘り”の野球が特徴のチームが揃う。
高知農は主将を中心にした組織力が強み。
阿南光は堅実な試合運びで接戦に強い。
■ 九州(6校+21世紀枠1校) 総合力最強。近畿最大の対抗勢力
九州国際大付/長崎日大/熊本工/神村学園/沖縄尚学/長崎西
各高校“完成度の高さ”が光る。
神村学園は打率.382、防御率0.99と攻守ともにハイレベルで優勝も狙えるチーム。
沖縄尚学は末吉選手の復活が鍵。
九州国際大付は将来性抜群の左腕・岩見選手を擁する。
長崎西はエースの安定感が武器の技巧派チーム。
優勝候補4校
大会の中心と見られるのは次の4校だ。
横浜
前回大会優勝校。織田選手を中心に投手力と守備力が高く、甲子園経験も豊富。
山梨学院
二刀流の菰田選手を中心に打撃力が全国トップクラス。打線が爆発すれば一気に頂点まで駆け上がる可能性がある。
大阪桐蔭
圧倒的な打力と選手層の厚さ。トーナメントでの爆発力は随一。
花巻東
古城選手、赤間選手のWスラッガーを中心に試合運びのうまさが光る。
第98回センバツ注目選手10人
〜甲子園を動かす“主役候補”たち〜
センバツはスター誕生の舞台でもある。今大会で特に注目される10人を挙げたい。
■ 菰田陽生(山梨学院/投手・内野手)
194センチ・102キロという規格外の体躯を誇る“怪童”。
最速152キロの直球以上に魅力なのは、その底知れぬポテンシャルだ。長身ながら角度に頼らず、並進運動で押し込むフォームは完成途上。昨秋は故障明けで本領を発揮できなかったが、それでも関東制覇に貢献した。打者としても高校通算30本超の長打力を誇り、まさに二刀流の可能性を秘める存在。今大会は「通過点」と言い切れるスケールを、聖地でどこまで見せられるか。
■ 織田翔希(横浜/投手)
最速154キロ。数字以上に「質」で勝負できる完成度の高い本格派右腕だ。
長身から投げ下ろすボールは浮き上がるような軌道を描き、打者の差し込まれ方が異常。精神面も含めて“勝てる投手”としての資質は群を抜く。横浜の歴史においてもトップクラスと評される存在であり、今大会では絶対的エースとして真価が問われる。伝説を作る準備は整っている。
■ 末吉良丞(沖縄尚学/投手)
“宮城大弥型”の完成度を誇る本格派左腕。
右打者の外角高めへ逃げる「シュートハイ」とスライダーのコンビネーションは高校生レベルでは攻略困難だ。昨夏の甲子園優勝投手でありながら、昨秋は不振に苦しんだ。だからこそ今大会は“復活の舞台”。再びスコアボードにゼロを並べる姿を見せられるか、注目が集まる。
■ 吉岡貫介(大阪桐蔭/投手)
外見からは想像できない球威を誇る“中身で勝つ右腕”。
最速153キロのストレートは強烈なスピンを伴い、奪三振率12.97という驚異的な数字を残した。制球力も高く、試合を支配する能力に長ける。大阪桐蔭の絶対的な強さを支える存在であり、今大会の優勝の鍵を握る投手の一人だ。
■ 杉本真滉(智辯学園/投手)
「投げっぷり」で試合を支配する左腕。
最速149キロのストレートとスライダーで三振を奪い、奪三振率12.84を記録。守備のミスにも動じない胆力は、短期決戦で大きな武器となる。死のブロックに入った智辯学園だが、一発勝負ならこの左腕が流れを一変させる可能性は十分だ。
■ 川本晴大(大阪桐蔭/投手)
192センチの長身から叩きつける本格派左腕。
縦の角度を生かした直球は、最速146キロ以上の迫力を持つ。まだ2年生ながら将来性は抜群で、吉岡との左右二本柱は大会屈指の投手陣を形成する。今大会は“覚醒前夜”。その片鱗を見せるだけでも、全国にインパクトを残すだろう。
■ 古城大翔(花巻東/三塁手)
木製バットで結果を残す異色のスラッガー。
高校通算26本塁打を誇り、昨秋の神宮大会ではスタンドに叩き込んだ。打撃だけでなく、走塁や守備でも高い意識を持つ総合型の長距離砲だ。父は元プロ野球選手という血統もあり、注目度は高い。木製バット革命を起こす存在になれるか。
■ 赤間史弥(花巻東/外野手)
古城選手と並ぶ“ツイン砲”の一角。
通算29本塁打を誇り、バットヘッドを効かせた打撃で全方向に長打を放つ。変化球への対応力も高く、単なるパワーヒッターではない。まだ甲子園で本塁打がないだけに、今大会での一発に期待がかかる。打線の爆発力を左右する存在だ。
■ 池田聖摩(横浜/遊撃手)
身体能力で魅せる“次世代型ショート”。
強肩・俊足に加え、プレーの初動が圧倒的に速い。守備だけでなく走塁でも違いを生み、試合の流れを変えることができる選手だ。打撃もシャープで、総合力は今大会屈指。2026年ドラフトの目玉候補として、そのプレーにはスカウトの視線が集まる。
■ 谷渕瑛仁(大阪桐蔭/内野手)
打席に立つだけで空気を変える“ハードパンチャー”。
打率.529という圧倒的な数字に加え、強烈な打球音が特徴だ。昨秋はサイクルヒットを達成し、勝負強さも際立つ。まだ守備に課題は残るが、打撃だけで試合を決められる力を持つ。大阪桐蔭打線のキーマンであり、相手にとって最も警戒すべき打者の一人だ。
■ 吉岡伸太朗(専大松戸/捕手)
強打の捕手という希少な存在。
打率.471を記録し、主砲として打線を牽引する。ノーステップ打法から鋭く振り抜くスイングは、投手の球威をものともしない。さらに捕手としての守備力も向上中で、攻守にチームの中心を担う存在だ。強打を誇る専大松戸の象徴的な選手といえる。
彼らの活躍が大会の流れを大きく左右する可能性が高い。
★試合予想
優勝候補の中でも最も安定感があるのは横浜だ。
投手力と守備力が高く、接戦での試合運びに長けている。甲子園経験豊富な選手が多い点も大きな強みで、短期決戦では非常に有利といえる。
打線も上位から下位まで切れ目がなく、攻守のバランスという点では今大会随一のチームだ。
もちろん大阪桐蔭や山梨学院など強力なライバルも多く、混戦の大会になる可能性は高い。しかし総合力という点では横浜が一歩リードしていると見たい。
春の甲子園が生む新たな物語
センバツは「秋の実力校の大会」と呼ばれるが、そこに21世紀枠や公立校の挑戦が加わることで大会はよりドラマチックになる。
長崎西や高知農のような学校が強豪私学に挑む姿は、高校野球の原点ともいえる光景だ。
強豪校の覇権争いか、それとも新たな旋風が起こるのか。
第98回センバツは、実力とドラマが交差する大会となりそうだ。
2026年3月19日(木) 球児たちの新たな物語が、聖地・甲子園で幕を開ける。

