蓮沼選手は、身長156cm、体重58kgと小柄な選手でありながら、さいたま市立大宮北高等学校の主将を務める。出身は上尾市立大石中学校で、小学2年から浅間台パワーズで野球を始めた。中学時代に「オール上尾」にも選出された実績があるが、大宮北を選んだ理由は意外にもシンプルだった。自転車で通える距離であること、そして中学時代に大宮北を訪れた際のチームの雰囲気が「楽しそう」だったことだと語る。遠くない距離と居心地の良さ。それは蓮沼選手にとって、野球を続ける上で何より大切な条件だった。

文武両道を支えるルーティンと自己管理
蓮沼選手は学業と部活動の両立を強く意識している。朝は毎日5時半に起床し、約1時間を勉強時間に充てる。夜は早く寝ることを習慣にし、就寝前の30分も欠かさず学習時間を確保するという。小さな時間を積み重ねていくことで、試験期間や遠征が重なる多忙な時期でも学力を維持してきた。
このルーティンは単なる時間管理に留まらない。早起きによる体調管理、睡眠時間の確保、集中力のコントロールなど、野球選手としてのパフォーマンスにも直結している。主将としてチームをまとめる立場にある蓮沼選手は、練習の質を上げるためにも自分の生活リズムを律している。
「言い合える」関係と勝ち上がるために必要なもの
大宮北のチームカラーは明るさと仲の良さだ。蓮沼選手は「皆仲が良く、言いたいことを言い合える雰囲気」がチームの強みだと話す。チームを盛り上げるムードメーカーには寺尾昊之佑選手の名を挙げ、常に声を出してチームに活気をもたらしていると評価する。若いチームながら意見を交わし合い、互いに刺激し合う関係が、日々の練習の高い密度を生んでいる。
しかし雰囲気の良さだけではチームは勝ち上がれない。大宮与野杯での敗因として蓮沼選手は自身の守備のミス、特に捕球の精度と球際の弱さを挙げる。雰囲気が良い中でもお互いに技術を高め合い、要所で各選手同士が先のプレーについて仮説をたて言い合える。特に緊迫した場面での”集中力” ”一球への執念”の差が結果に影響したと素直に振り返る。その自覚があるからこそ、彼は今冬の守備強化に意欲を見せる。
「楽しむ」主将が導く冬に誓う成長と覚悟「打倒強豪私学」
2025年夏の大会、聖望学園戦では序盤から相手投手に対してヒットを重ね、コールドペースで試合を進めていた。だが同試合は思わぬ逆転で敗れ、蓮沼選手は「流れの怖さ」を痛感したという。この経験は彼にとって大きな教訓となり、試合の流れを読む力の大切さを知ったという。
新チーム発足時から主将を任された蓮沼選手は、リーダーとしての自覚を強く持つ。先輩たちの築いた土台に追いつき追い越すため、技術面だけでなくチームの精神面でも成長を促している。現状では技術や体格で私学の強豪に及ばない部分があると正直に語るが、目標は変わらない「打倒強豪私学」。
投手陣の中心として森岡選手、飯島選手、延原選手の三本柱が投手力の要となっており、蓮沼選手は彼らを中心に守り、打線で援護する野球を描いている。
また、蓮沼選手の最大の武器は「野球を心から楽しんでいる」ことだ。野球を始めた頃からずっと野球が好きだと語る。そんな大好きな野球だが彼の課題としては守備面を挙げる。特に内野の基本動作、捕球の安定、球際の強さが求められる。秋季大会ではエラーが直接的な敗因となった試合があり、蓮沼選手は「基礎に立ち返る」姿勢で冬のトレーニングに臨むという。体づくりと技術向上を並行して進め、打撃だけでなく守備でも信頼される内野手を目指す。

冬の取り組みと春・夏への戦略
蓮沼選手が語ってくれた冬場に取り組む重点項目は二つ。
まずは体づくり。筋力と体格をサイズアップさせ、強豪校の投手の球に対しても粘り強く対応できる身体を作る。「サイズを二まわり大きくする」という具体的な数値目標を掲げる。
もうひとつは守備力の底上げ。捕球動作の反復、状況判断の訓練、球際での強さを養うための練習を行う。
春・夏の大会では、まずは失点を減らす守備力の向上が勝利への鍵になる。打線ではチャンスに確実に一打を放つこと、四死球を減らすことが課題。投手陣の力を最大限に引き出すため、野手が安定した守備でバックアップする。蓮沼選手は自身だけでなく、チームとしての課題も理解している。
チームが掲げる「打倒強豪私学」という目標は決して現実離れしたものではない。春以降、日々の積み重ねと冬の努力が結実したとき、彼の率いる大宮北が大きく飛躍する可能性は十分にある。
【取材後記】小さな主将が起こす大きな進化「楽しむ野球」の真価
主将としてチームや自身の課題を理解し克服していく姿。主将としてチームを引っ張る責任を自覚しつつ、仲間との和やかな関係を大切にしている姿、様々な重責がありながらも彼自身が野球に対する愛情を失わないことが彼の最大の魅力だ。
秋の悔しさを冬に変えるという言葉通り、彼の掲げる体づくりと守備力強化が実を結べば、来たる春・夏の舞台で新たな物語が生まれるはずだ。今後もその成長を見守っていきたい。
大宮北の野球として打撃は前の学年からのストロングポイントであり相手の投手に対して臆することなく狙いにいく姿勢が印象的だ。選手全員が積極的にバットを振りヒットを量産し打ち勝つ野球の印象が強い。
打線の繋がり、守備の安定、走塁の精度、すべてが噛み合ったとき、大宮北は強豪私学勢に対抗しうるチームになるはずだ。
2年連続の春季大会ベスト8へ。大宮北の歴史はまだまだ始まったばかりだ。

