文武両道の環境を求めて
鳥飼選手が検見川高校を選んだ理由は、明確だった。
「文武両道で、部活も勉強も本気で取り組める環境だと思ったから」
この言葉には、野球だけではなく、学業も含めて“高校生活を丸ごと成長の時間にしたい”という思いが込められている。
小3の時に土気グリーンウエーブで野球を始め、中学時代は千葉市リトルシニアで経験を積んだ。右投右打、身長172cm・体重73kg。現在はセンターとして1番や3番を任される主力選手だ。
検見川高校は「頭を使う野球」「選手主体のチーム運営」を掲げる“千葉で一番大人なチーム”を目指している。鳥飼選手はその中心でチームを支える存在となっている。
終始落ち着いた雰囲気を放つ彼に話を伺った。
仲の良さと自立心が共存する“検見川らしさ”
検見川高校の雰囲気を鳥飼選手に問うと、
「面白い選手が多く、仲が良いチーム」と即答してくれた。特にムードメーカーとして名前が挙がるのが、鈴木選手。
「学校生活でも場を盛り上げてくれる存在で、チームが落ちている時でも声を出して雰囲気を変えてくれる」
この良い雰囲気は、日々の練習の中で、選手同士が積極的に意見を交わす文化が根付いているからこそ生まれている。指導者から指示を受けるだけではなく、選手たちが自ら考え、動き、成長していく。それが検見川高校野球部の長所である。
また鳥飼選手自身も、チームをまとめる意識を強く持っていた。
「1年生と2年生の仲を深めていきたい。2年生に足りない部分は1年生に頼ってしまっている部分がある。そこを頼らなくても大丈夫なようになりたい。また学年関係なく意見をもっと言い合える環境がチームを強くする」
彼は上下関係の“壁”を壊し、自然体でチームが動けるように環境を整えようとしている。選手間の関係性が良くなれば、プレー中の連携も変わる。声の質も、判断も、試合の流れも良くなる。
鳥飼選手の言葉から、検見川高校がなぜ“自立した選手”を多く生むのかがよくわかる。
打撃フォームの確立と守備の課題――2年生の現在地
鳥飼選手は自身のストロングポイントである打撃の手応えを深く感じていると語る。
「自分の中で、打ちやすいフォームの感覚が掴めてきた。インコースでもアウトコースでも、同じスイングで対応できるよう意識している」
このフォームの安定が、長打力の向上につながっている。2025年11月現在で高校通算5本塁打。初ホームランは2年春で、そこから半年で本数を一気に伸ばした。その勢いに、彼自身も手応えを感じている。
「引退までに2桁ホームランを打ちたい」
その目標は決して夢ではない。
一方、守備では明確な課題があると語る。
「背走が苦手。だからこそ、日々のノックでどう改善できるか考えながら取り組んでいる」
センターはただ守備範囲が広いだけではなく、全体を統率する“第2の捕手的ポジション”でもある。打球判断の1歩の遅れが失点に直結するポジションだからこそ、自身に厳しく高みを目指している。
走塁面でも、自ら課題を口にする。
「次の塁を積極的に狙うこと。ショートバウンドの瞬間にスタートする意識を持っている」
検見川高校が掲げる“考えて勝つ野球”を体現しようとする姿勢は、走塁の細部にも表れている。
弱点として挙げたのがメンタル面だと語る。
「エラーをすると落ちてしまう。それを改善しないとチームに影響がでてしまう。」
自ら言語化できる姿は自身を俯瞰して考えられており、改善への道筋が見えてくる。
また試合中には、常にセンターから外野陣への指示を出し、配球ごとに守備位置を調整する。
その声と判断が、チームの守備全体を動かしている。
長所・短所を自身で理解しつつ鳥飼選手は試合経験を積むごとに、精神面でも成長を続けている。
積み重ねが生んだ“勝ち切る力”――印象に残る2つの試合
鳥飼選手が高校野球で印象に残った試合は、秋季大会予選・明聖高校戦だと語る。
「接戦だったけど、5−4で勝ち切れたことが嬉しかった」
競った試合を取りきる力は、チームの成熟度を測るうえで大きな指標になる。その勝利は、鳥飼選手だけでなくチーム全体に自信をもたらした。
もう一つは、自身初本塁打を放った茂原北陵高校戦。
「初めてのホームランは忘れられない」
このホームランは、幼少期から努力を積み上げてきたスイングが形になった瞬間だ。
この試合をきっかけに、鳥飼選手の長打力はさらに開花している。
家族への感謝と、道具を大切にする姿勢
鳥飼選手は日々支えてくれている家族への感謝を口にした。
「両親や祖父母には本当に感謝している。特に新チームになって秋季大会の初戦では、家族の応援が勇気づけになった」
結果で返したいと語る姿に、彼の野球に対する想いや家族への感謝が伝わってきた。また道具へのこだわりも強い。
中学1年生から使い続けているアンダーアーマーのグローブは、今後も買い替える予定はないという。
結果を追い求めるには、日々の積み重ねや支えてくれる人、道具への感謝を忘れないこと。このような姿勢が、彼のプレーを支えている。
彼は検見川高校野球部の未来を形づくる中心選手であり、これからの成長が楽しみな存在だ。
【取材後記】チームを動かすセンターが、検見川の色を濃くする
鳥飼選手の話は、言葉の中に強い芯があった。
打撃の成長、守備の課題、走塁の意識、メンタル面の弱さ。
それらを自分の言葉で語り、改善への道筋まで考えることができる高校生は多くない。
明るく、仲が良く、でもやるべき時には冷静に頭を使って試合を運ぶ。
大人なチームの中心に、鳥飼選手がいる。
一冬越えて、長打力はまだまだ伸びる。走塁も守備も磨かれていく。
そしてチームをまとめる力も、これからさらに強くなっていくはずだ。
厳しい冬のトレーニングを乗り越えた2026年春の彼がどこまで成長しているか。
これからも応援を続けていく。
